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2018年3月26日
チャペック兄弟と子どもの世界

展覧会チラシはこちら チャペック兄弟と子どもの世界(PDFサイズ1,165KB)


開催趣旨:「ロボット」という言葉の生みの親として知られるチェコの作家カレル・チャペック(1890-1938)。最先端の技術革新によって変化していく世界を見据え、時に鋭く、時にコミカルな切り口で魅力的な著作を生み出し、造形作家として活躍する兄のヨゼフ・チャペック(1887-1945)とともに、多彩な才能を発揮しました。カレル・チャペックは文筆家としての創作と同時に写真も手がけ、自らのテキストに愛犬の写真を添えた『ダーシェンカ』などを発表しています。また、兄のヨゼフは日本でもロングセラーとなった『長い長いお医者さんの話』や、『こいぬとこねこはゆかいな仲間』などにより多くのファンを惹きつけています。
本展は、チェコの世界文化遺産都市クトナー・ホラーに新設された現代美術館で開催された「子どもたちを描いたチャペック兄弟の創作」展を基に、ご遺族やチェコ国立文学館、チャペック記念館などの協力によって開催されるものです。日本でもファンの多いヨゼフの絵本原画に加え、これまで日本でほとんど紹介される機会のなかったヨゼフの油彩やパステル画、ドローイング、カレルによる『ダーシェンカ』の写真やデッサンなど、初公開を含む幅広い作品により、チャペック兄弟が子どもたちに注いだ温かい視点で生み出した、チェコの優れた子どものための芸術をご紹介いたします。

開館時間:午前10時-午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:芦屋市立美術博物館 第1展示室、第2展示室
休館日:月曜日(ただし、7/16は開館、7/17は休館)
観覧料:一般800(640)円、大高生600(480)円、中学生以下無料
※同時開催「芦屋の歴史と文化財」展の観覧料も含む。( )内は20名以上の団体料金。高齢者(65歳以上)および身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳をお持ちの方ならびにその介護の方は各当日料金の半額になります。
※観覧無料の日:7月22日(日)、8月15日(水)  
主催:芦屋市立美術博物館
後援:チェコ共和国大使館、スロヴァキア共和国大使館、一般社団法人 日本国際児童図書評議会(JBBY)、兵庫県、兵庫県教育委員会、公益財団法人 兵庫県芸術文化協会、神戸新聞社、NHK神戸放送局、FM802
協力:チェコ国立文学館、スロヴァキア国立美術館、プラハ10区、カレル・チャペック記念館、GASK、チェコセンター東京
企画協力:株式会社イデッフ

 
■展示構成
第1章 子どものモチーフ/Children’s Motifs
子どもというテーマはヨゼフ・チャペックの初期の作品からみられるもので、その後も20世紀初頭のヨーロッパ芸術のいくつもの流れを融合し、ヨゼフ独自の表現に至りました。
ヨゼフは子どもの絵に触発されたものの、そのまま模倣したのではなく、子どもたちから表現の自由を学んだのでした。そして、子どもたちの遊びを生活の営みの理想として、また芸術表現のモデルとしてとらえていたのです。子どもの姿は30年代末期の反戦風刺の中にも、さらにナチスにより収監されたザクセンハウゼン強制収容所で遺した絵の中にも描かれ続けました。

第2章 おとぎ話/Fairy tales
チャペック兄弟は、良質な児童文学を作り出すことを目指し、1918年、カレルは様々な世代の作家や芸術家の作品を集めた三巻本『おとぎ話のかご』を編纂しました。第一巻には、カレルの「王女さまと小ネコの話」、ヨゼフの「私の太ったひいおじいさんとどろぼう」が収録されています。これが、後の『長い長いお医者さんの話』のきっかけとなり、1931年のクリスマスに向けて刊行され、現在では世界児童文学の古典作品として知られています。ヨゼフはこの童話を書き直し、舞台用の脚本にしました。そして、ヤロスラフ・クジチカ(1882~1969)の音楽によって子ども向けミュージカルとなり、1932年にプラハ国民劇場で上演されました。ヨゼフは自らその舞台美術も手がけています。

第3章 いぬとねこ/All About Doggie & Pussycat
ヨゼフとカレルは、新聞『リドヴェー・ノヴィヌィ』の日曜版で、児童向けの付録「子どものコーナー」を担当していました。この文章をもとにして生まれたのが、ヨゼフの『こいぬとこねこは愉快な仲間』とカレルの『ダーシェンカ、または子犬の生活』です。これらは世界中の言語に翻訳され、日本でも複数の版が出版されています。また、兄弟の没後には映像化されていて、子ども向けの人気テレビ番組「ヴェチェルニーチェク」でも放送されました。どちらのお話しも、それぞれの家庭で関心と愛情を注がれたペットがテーマになっています。
カレル自身が挿絵と写真を手がけた『ダーシェンカ』は、児童文学において写真絵本を作った先駆けとなりました。

第4章 さまざまな仕事/Commissioned Works
二つの世界大戦間の、児童文学の芸術的レベルを向上させようという流れのなかで、ヨゼフも他の画家と同様、質の高い子ども向けの挿絵を描くことに努めました。ヨゼフ自身は、児童文学の分野を専門にしたわけではなく、挿絵を手がけた本も、自著をのぞくと6冊だけだったにもかかわらず、1930年代末には、児童文学のイラストレーターとして評価されていました。ヨゼフはハイ・アート(高尚な芸術)とロウ・アート(大衆的な芸術)を区別することなく、子ども向けの作品に対しても、同様に取り組んでいたのです。
子どものテーマは、舞台美術、テキスタイル、ポスターデザイン、切手など、様々な創作活動の中で展開させています。1936年には、青少年の社会福祉に関する慈善切手のコンテストのために、子どもを描いた3種の切手をデザインしました(切手は未発行)。

第5章 子どもの視点/Seeing Things Like a Child
ヨゼフ・チャペックは、1923年に娘のアレンカが生まれると、素直で自由な子どもの視点を、親として体感することになります。そして、娘が5歳になった1928年頃、ヨゼフが40代になった頃から、彼の創作活動の中での「子どもの時代」がはじまります。遊ぶ子どもを飽くことなく何枚も描いただけでなく、子どもの表現を通して自らの作品を深化させました。それまでは、子どもの造形表現がより深く理解できるようになったのです。
《子どものモチーフ》というパステルの連作は、1935年に初披露され、翌年にはヴェネツィア・ビエンナーレで、チェコスロヴァキアの現代芸術を代表する作品として展示されました。

 
■作品

 
1. ヨゼフ・チャペック 《花を持つ少女》 1934年 油彩、カンヴァス 個人蔵、プラハ
2. ヨゼフ・チャペック 《リンゴが入った籠を持つ少年》 1930年 鉛筆、紙 個人蔵、プラハ
3. ヨゼフ・チャペック 《ボールで遊ぶ二人の少年》 1928年 油彩、カンヴァス 個人蔵、プラハ
4. ヨゼフ・チャペック 《ちちんぷいぷい》 1932年 インク、紙 個人蔵、プラハ
5. ヨゼフ・チャペック 《こいぬとこねこは愉快な仲間》 1929年 インク、水彩、クレヨン、紙 スロヴァキア国立美術館
6. ヨゼフ・チャペック 《ミンダと散歩するカレル・チャペック》 1926-1930年 鉛筆、インク、紙 プラハ10区
7. ヨゼフ・チャペック 《楽しい川辺》 1933年 インク、クレヨン、紙 個人蔵、プラハ
8. ヨゼフ・チャペック 《夏の少年たち(ぼくらの車)》 1931年 インク、紙 個人蔵、プラハ
9. ヨゼフ・チャペック 《水浴び》 1928-1935年 パステル、紙 個人蔵、プラハ
10. ヨゼフ・チャペック 《子どもの頭部》 1930年 パステル、紙 個人蔵、プラハ

 
■関連イベント
(1)講演会 「チャペック兄弟の魅力 ― その芸術の多様性と豊かさ」
日時:8月4日(土) 14:00-15:30
講師:石川達夫氏(専修大学教授、神戸大学名誉教授)
定員:80名
参加費:無料(ただし要観覧券)
会場:当館講義室

(2)ワークショップ 「版画で描こう絵本の世界」
日時:7月28日(土) 13:30-15:30
対象:小学生以上(定員30名)*事前申込制
材料費:300円(高校生以上は要観覧券)
会場:当館体験学習室
申込方法:電話(0797-38-5432)にてお申込みください。7月15日締切。
氏名・住所・年齢(子どものみ)・電話番号をお伝えください。*応募者多数の場合は抽選。

(3)上映会 「20世紀前半のチェコのアニメーション」
『二人の少年と一匹の犬が走り回っているのを見てごらん!』(監督:カレル・ドダルほか 1925
年7分)ほか *DVDでの上映です。
内 容:
・『二人の少年と一匹の犬が走り回るのを見てごらん!』(原題:Vizte vse, co tropi dnes dva kluci a jeden pes 1925年 7分)
・『フィリックス・ザ・キャット;海の上の水兵さん』(原題:Plavcíkem na slane vode 1929年 9分)
・『子どもたち(靴メーカー・バチャの広告)』 (原題:Nase deti 1935年 6分)
・『ユビキタス君の冒険』 (原題: Vsudybylovo dobrodruzstvi 1936年 8分)
・『ルチェルナ宮の秘密』(原題:Tajemstvi lucerny 1936年 2分)
・『失敗作のニワトリ』(原題:Špatně namalovaná slepice 1963年 14分)
日時:7月29日(日)、8月19日(日) 両日とも14:00- 
定員:80名
参加費:無料(ただし要観覧券)
会場:当館講義室

(4)ミュージアム de おはなしの会
日時:7月22日(日)、8月5日(日) 両日とも11:00-11:30
対象:3歳以上(定員50名)
参加費:無料(ただし要観覧券)
会場:当館講義室
*協力:芦屋市立図書館、ボランティアグループ・ムギの会

(5)ギャラリートーク
日時:7月21日(土)、8月11日(土) 両日とも14:00- 約1時間(予定) 
参加費:無料(ただし要観覧券)
申込不要。直接展示室へお越しください。
 

■会期中の毎週水曜日は「トークフリーデー」(会話を楽しむ美術の時間)
ご家族やお友だちと自由におしゃべりを楽しみながらご鑑賞いただける日を設けました。お気に入りの作品を見つけて会話を楽しんでいただこうという取り組みです。小さなお子さまとご一緒の方もリラックスして、ぜひご来館ください。

■ミュージアムショップ
本展の会期中には、チャペック兄弟作の絵本をはじめ、本展オリジナルグッズや絵はがき、各種ステーショナリーなどのチェコ雑貨も販売いたします。

■近隣美術館コラボ企画「子どもも楽しめる3つの美術館をまわろう!」
阪神間で開催されている3つの展覧会で観覧料の相互割引をいたします。
下記の展覧会の半券をチケット販売窓口でご呈示いただくと他の2つの展覧会を団体料金でご覧いただけます。
詳細は、「子どもも楽しめる3つの美術館をまわろう!」をご覧ください。
 
芦屋市立美術博物館
「チャペック兄弟と子どもの世界」展
7月1日(日)〜9月9日(日)
 
伊丹市立美術館
「みんなのレオ・レオーニ展」
8月11日(土・祝)〜9月24日(月・振休)
http://artmuseum-itami.jp
 
西宮市大谷記念美術館
「2018イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」
8月11日(土・祝)〜9月24日(月・振休)
http://otanimuseum.jp
 
■近隣美術館コラボ企画「バスに乗って展覧会を見に行こう!」
「2018 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」と「チャペック兄弟と子どもの世界」展の会期中に、西宮市大谷記念美術館と芦屋市立美術博物館をつなぐマイクロバスを運行します。
8月14日(火)、21日(火)、28日(火)に実施いたします。
*お一人様100円で乗車していただけます
*詳細は美術博物館ニュースの「バスに乗って展覧会を見に行こう!」をご覧ください。
 
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