”偶像”のように理想化された人物像は洋の東西を問わず、いつの時代にも絵画化されています。江戸時代の美術を代表する浮世絵版画には、当時の人々が好んだ風貌の人物が数多く描かれ、庶民階層から貴族や姫君に至るまで幅広い人物が題材とされます。
なかでも、歌舞伎役者や町の美女たちが描かれた役者絵、美人画はまさに当世美意識の結晶です。そのような美男・美女が紡ぎだす恋物語は江戸時代文化を物語るもので、当時流行した「仇討ち物」や「心中物」には当時の複雑な男女の恋愛が盛り込まれています。「仮名手本忠臣蔵」や「心中天網島」など、人々の心に訴えかける物語が江戸時代に数多く生み出され、その恋のエピソードが浮世絵にたくみに描写されています。
そもそも「好色」という言葉は、今日ではあまりイメージの良くない言葉で使用されますが、流行の敏感でセンスがよく、言葉遣いも気が利き、人への気遣いも慣れていて、教養があり、芸事にも達者な人物を意味します。江戸時代にはこの”好色”こそが、異性にもてる要素だったのです。
本展では、このような江戸時代の恋愛事情や、当時美しいとされた美男・美女の姿から、物語に盛り込まれた様々な恋のエピソードを幅広く紹介し、江戸時代当時の社会に迫りたいと思います。
開館時間:午前10時-午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日休館)、ただし10月5日は月曜日ですが開館いたします。
観覧料:一般1000(800)円、大高生500(400)円、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金
※高齢者(65歳以上)および身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳をお持ちの方ならびにその介護の方は各当日料金の半額になります。
○11月14日(土)、15日(日)は関西文化の日により、どなたでも無料で展覧会をご覧いただけます。
主催:芦屋市立美術博物館
後援:兵庫県、兵庫県教育委員会、公益財団法人兵庫県芸術文化協会、神戸新聞社、NHK神戸放送局、ラジオ関西
協力:ジュンク堂書店芦屋店
■主な展示品※< >内は展示期
喜多川歌麿 「江戸六玉顔 此君情深し」 享和2(1802)年 和泉市久保惣記念美術館蔵 <第3期>
歌川広重 「東海道五十三次 赤坂 旅舎招婦ノ図」 天保4(1833)年頃 和泉市久保惣記念美術館蔵 <第4期>
葛飾北斎 「春興五十三駄之内 品川」 享和4(1804)年 和泉市久保惣記念美術館蔵 <第3期>
葛飾北斎 「冨嶽三十六景 東海道品川御殿山ノ不二」 文化12(1815)-天保13(1842)年 和泉市久保惣記念美術館蔵 <第2期>
葛飾北斎 「北斎漫画」 文化11(1814)年頃 個人蔵
照皇亭貞広 「おそめ」「久松」 明治6(1873)年 個人蔵 <第4期>
丸丈斎国広 「嵐璃寛の赤根屋半七と岩井紫若のみの屋三かつ」 天保5(1835)年 個人蔵 <第1期>
菊川英山 「夏風俗美人姿」 文政3(1820)年頃 片岡家蔵
渓斉英泉 「江戸名所仇競 高名輪の春の海」 天保2~6(1831~35)年頃 片岡家蔵
歌川国芳 「四季遊観納涼のほたる」 天保14(1843)年 片岡家蔵
歌川国芳 「時世花鳥風月 風」 嘉永2(1849)年 片岡家蔵
歌川豊国(三代) 「にわか夕立」 嘉永5(1852)年頃 片岡家蔵
歌川豊国(三代)「江戸名所百人美女」 安政5(1858)年 片岡家蔵
歌川豊国(三代)「源氏後集余情」 安政6(1859)年 片岡家蔵
など総展示数約120点
※会期中、4期に分けて一部展示替えを予定しております。
〈第1期〉=8月12日(水)~9月6日(日)
〈第2期〉=9月8日(火)~10月4日(日)
〈第3期〉=10月5日(月)~10月25日(日)
〈第4期〉=10月27日(火)~11月15日(日)
■作品
1.喜多川歌麿 「難波屋おきた」 寛政5(1793)年頃 和泉市久保惣記念美術館蔵<第1期>
2.鈴木春信 「筒井筒」 江戸時代 和泉市久保惣記念美術館蔵<第3期>
3.喜多川歌麿 「美人五節の遊」 江戸時代 和泉市久保惣記念美術館蔵<第3期>
4.歌川広重 「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」 安政4(1857)年 和泉市久保惣記念美術館
<第3期>
5.喜多川歌麿 「当時三美人」 寛政2(1790)-文化元(1804)年 和泉市久保惣記念美術館蔵
<第2期>
6.歌川国芳 「清盛と常盤御前」 弘化元(1844)年頃 片岡家蔵
7.月岡芳年 「新撰東錦絵 生嶋新五郎之話」 明治16(1883)年 片岡家蔵
■関連事業
(1)講演会「上方浮世絵の世界」
上方浮世絵の歴史と特徴から江戸時代における上方の文化を解説します。
日時:9月12日(土)14:00~
会場:当館1階講義室
講師:北川 博子氏(あべのハルカス美術館 主任研究員)
聴講費:無料(要展覧会チケット)
定員:60名
(2)マリンバデュオとピアノ、歌と言葉で紡ぐコンサート「いにしえの恋物語に魅せられて」
日時:9月20日(日) 14:00~15:30
会場:当館1階ホール
参加費:無料(要展覧会チケット)
(3)ワークショップ「木版画を摺ってみよう」
日時:10月4日(日)14:00~
会場:当館1階体験学習室
講師:長谷川 可奈氏(木版画作家)
参加費:無料(要展覧会チケット)
定員:30名
申込方法:9月25日(金)までに美術博物館にお電話ください。※定員に達し次第締切。
(4)講座「浮世絵から読み解く江戸時代の恋物語」
歌舞伎や浄瑠璃などに取り上げられる江戸時代の恋物語と浮世絵との関係を探ります。
日時:10月12日(月・祝)14:00~
会場:当館1階講義室
講師:当館学芸員
聴講費:無料(要展覧会チケット)
定員:60名
(5)シリーズ講座「浮世絵恋物語」(全4回)
本展の出品作品について各セクションに分けて解説を行います。
日時:第1回 8月30日(日)14:00~
第2回 9月6日(日)14:00~
第3回 10月31日(土)14:00~
第4回 11月15日(日)14:00~
会場:当館1階講義室及び展示室
講師:当館学芸員
参加費:無料(要展覧会チケット)