休館日:月曜日(ただし祝日の場合は翌火曜日休館)
開催趣旨:江戸時代の日本美術を代表する浮世絵は国内外を問わず、今も多くの人々を魅了してやみません。とりわけ、自らを「画狂人」と称した葛飾北斎の名作、富嶽三十六景「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」は芸術性の高さが評価されています。中でもその色鮮やかな青の彩色は鑑賞者に強い印象を与えます。
墨摺版画として発祥した浮世絵版画は、はじめ紅絵と称されるように赤系統の着彩が主で、青色はほとんど使用されませんでした。本格的な多色摺版画の錦絵を始めた鈴木春信(1725‐70)によって浮世絵に青色の彩色がなされるようになりました。春信は露草青とよばれる爽やかな青色の彩色を人々の衣装や、河川の描写に使用しました。しかし、植物系の色絵具である露草青は保存に難点があり、光に弱く退色しやすいため、現在の春信の作品に見ることはできません。
その後、役者絵で有名な東洲斎写楽(1763~1820)の活躍期、寛政6(1794)年頃から、藍という鮮明な淡青色が使用されるようになりました。この藍は退色せず、現在も多くの浮世絵の名品でみることができます。ただし藍は大量生産が困難であり、水に溶けないことから、版画の制作上、ぼかしなどを表現することが困難でした。
そこで、新たに登場するのがベルリンブルーという青色絵具です。1704年(日本では宝永元年)、ベルリンで発見された万年筆の青インクに類似した化合物で、水によく溶け、光や酸化にも耐えうる優れた性質の絵具です。その色調は澄明で、淡い水色から深い濃紺色まで美麗に着彩でき、空や海、川などの青色の描画に適しています。まさに、葛飾北斎(1760~1849)の「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」は、このベルリンブルーを使用した先駆的な傑作です。
露草青から藍、そしてベルリンブルーへと使用される青色絵具の変遷は、浮世絵師にとって芸術性を極める努力の結晶といえます。これまでベルリンブルーが使用される画期については、北斎の作品から紹介される機会がありましたが、本展では特に鈴木春信、喜多川歌麿(1753‐1806)、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重(1797‐1858)などの名品から、青色絵具の変遷を一貫してご紹介し、浮世絵のもつ魅力に迫ります。
開館時間:午前10時-午後5時(入館は午後4時30分まで)
観覧料:一般800(640)円[前売600円]、大高生500(400)円[前売350円]、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体割引料金
※高齢者(65歳以上)および身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳をお持ちの方ならびにその介護の方は各当日料金の半額になります。
主催:芦屋市立美術博物館、礫川浮世絵美術館
後援:兵庫県、兵庫県教育委員会、公益財団法人兵庫県芸術文化協会、
芦屋ユネスコ協会、神戸新聞社、NHK神戸放送局、
関西テレビ放送、株式会社ラジオ関西
企画協力:アートシステム
監修:松井英男氏(礫川浮世絵美術館館長)
【主な展示品】
・鈴木春信 「座敷八景 時計の晩鐘」明和3(1766)年
・喜多川歌麿 「当時三美人」寛政5(1793)年
・東洲斎写楽 「二世坂東三津五郎の石井源蔵」 寛政6(1794)年
・葛飾北斎 「富嶽三十六景 凱風快晴」 文政12(1829)年
・葛飾北斎 「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」 文政12(1829)年
・歌川広重 「東海道五十三次之内 蒲原 夜之雪」 天保5(1834)年頃
・歌川広重 「東海道五十三次之内 庄野 白雨」 天保6(1835)年頃
・歌川国芳 「東都名所 大森」 天保2(1831)年
など総展示数約120点
一部展示替
【関連事業】
(1)オープニング記念展示解説会
日時:3月20日(水・振替休日)10:30~
講師:松井英男氏(礫川浮世絵美術館館長)
会場:ホール及び展示室
参加費:無料(要観覧券)
(2)講座 「青の文化史―日本美術にみられる古代の青から浮世絵の青まで」
日時:4月20日(土)14:00~
講師:当館学芸員
会場:講義室
参加費:無料(要観覧券)
※申込不要
(3)ワークショップ
「多種多彩な「青」で描く-喪失と再生の色ブルーに癒されませんか?」
日時:3月31日(日)13:00~
講師:井上よう子氏(画家・大手前大学、成安造形大学非常勤講師)
会場:体験学習室
参加費:無料
定員:30名
内容:ポストカードに、ブルーの陰影で静物を描き、あるいは抽象的に色の配置やにじみ、ぼかしを表現します。
※要事前申込
申込方法:美術博物館へお電話ください。 TEL:0797-38-5432
申込締切日:3月15日(金) ※定員に達し次第締切。
(4)学芸員によるギャラリートーク
日時:3月23日(土)、4月6日(土)、4月27日(土) 14:00~
会場:展示室
参加費:無料(要観覧券)
【同時開催】
「片岡家所蔵浮世絵―珠玉のコレクション 風景のなかの『青』」展